真木健一 著
1993/01/10 初版 河出書房新社
ISBN-13 : 978-4-309-00818-9(出版停止)

真木健一 : 「白い血」

書籍紹介(河出書房新社 HPより)


繁華街でのナンパとケンカの日々に別れを告げ、健次は目下受験勉強に専念中。そんなある日、一人の少女との出逢いが彼の青春を熱くした。恋と暴力の世界を哀切に描いた青春長篇小説。1992年 第29回文藝賞 佳作受賞作品。

岡村靖幸との関連


物語のヒロイン “トヨコ” が岡村靖幸のファンという設定で、作中に 「Dog Days」 「19(nineteen)」 「Check Out Love」 他、岡村楽曲の歌詞が多数引用されています。

「せつないのよ」 トヨコはいった。

「オカムラの歌って、夕陽をながめてるときみたいに。せつないの。あたし、日本のロッカーじゃオカムラがいちばんスキ。あんたは?」

「きいたことねえな」 おれは受話器を耳につけたまま首をふった。

「ダメよ、ブラックばかりきいてちゃ。日本のロックもきかなきゃ。オカムラはね、プリンスを標榜してるのよ」
“標榜” なんて言葉づかいをするあたり、いかにもトヨコらしい。

「あんたのすきなプリンスよ-でもねえ、プリンスになりきれないの、オカムラって。いつも滑稽なピエロになっちゃうの。でもね、そのピエロがとても愛くるしいの、せつないの。プリンスの看板の《グラムスラムの王子》に魅かれてるんだけど、じぶんで作る歌は狂おしいほど《オージー》に焦がれる自慰高校生の心ばっかなの。それがたまんないの。せつないの。あんたにわかる、負けてゆくものの美しさとか?わかんないわよね・・・あんた、子どもだもん」

おれは笑った。
「オカムラってのは学生服とセーラー服の歌-世間しらずのペニスと恥しらずなプッシーが街角ですれちがう歌ばかり作ってんのか?」

「わかんないのよ」 トヨコはいう。

「あんたにはわかんないのよ」

関連リンク


真木健一 : ブログ 「海豚座紀行」

Wikipedia 「文藝賞」