インタビュアー （以下、I）:
｢ミラクルジャンプ｣ のPVは一日で撮ったんですか？
松元浩一（以下、ゲン）:
ええ、一日で撮り切りました。
I :
場所はどこなんですか？
ゲン :
大阪プロレスという団体に協力していただいて、フェスティバルゲートというところに常設されているデルフィンアリーナ。PVの中に出てたマスクマンのスペル・デルフィンさんの団体なんですけど。
I :
何でまたプロレスなんですかね？
ゲン :
これはですね、岡村自身はプロレスとか格闘技と かには興味は持っていなくって、ただ僕も含めてレコード会社の担当者とかスタッフみんな格闘技好きが多くって、現象としてPRIDEやK-1なども含めて流行っているのは岡村も認識してて、一緒にビデオを見たりとか。
I :
何のビデオですか？
ゲン :
プロレスのビデオ。
I :
ほお～！！
ゲン :
そんな中で、プロレスを使って面白いものができ ないかということが本人から出てきたんですよ。
I :
毎回そうではないですが、PVと歌詞がリンクしているわけではないですよね？
ゲン :
ハッハッハ！！ そうそう。ただ曲の持っているポジティブ感みたいなものをシニカルな形で表現されているとは思いますけどね。
I :
岡村ちゃんのPVの役どころは何なのでしょう？
ゲン :
あれはですね、プロレス会場で普通に興業が行なわれているんですけど、全くお客さんには岡村がパフォーマンスしているのは見えていないかのごとく進んでいくんだけど・・・。
I :
妖精のようですね。
ゲン :
そう、全く見えてなくて、ミラクルを起こすという役どころですね。
I :
ああ～なるほど、試合の展開は岡村ちゃんがミラクルを起こしているんですね！
ゲン :
冒頭のイントロダクションでも流血してやられたレスラーにミラクルを注入している。｢ベルリン・天使の詩｣ でしたっけ？ そういうイメージなんですよ。
I :
根底にあるものはかなりシュールなんですね。
ゲン :
そう！ かなりシュール！ だからシニカルさとシュールさが盛り込まれていて、何だこりゃ？ってなるんだけど。
I :
そういう意味では、岡村ちゃんの曲イメージに通ずるところはありますね。うまい具合に混在している感じですね。ただ普通に聴くと、何だこりゃ？っていう感じに捉える人も少なくないんですけど、歌詞の深さみたいなところがあったり・・・。
ゲン :
そうそう。
I :
今回のPVは ｢モン・シロ｣ に比べていかがですか？
ゲン :
本人のアイデアがふんだんに生かされているという点では見ごたえアリますね。
I :
収録中に苦労した点は？
ゲン :
今回は、やっばり本物のレスラーを起用しようという点と、（プロレス）興業のスケジュールとエキストラをどうするという点と、コンテを綿密に作っていかないといけないので、4分弱の間にプロレスの試合展開と曲の展開を見せなければいけなかったので、ミュージックビデオの監督ではなく映画監督を起用した方がよいだろうという事で、今回は色々な作品を観て本田隆一監督にお願いしました。
I :
撮影当日は朝からピッシリだったんですか？
ゲン :
いや。（撮影当日は）昼の興業が終わってからお客さんを出して、エキストラに入れ替えて、その場で演技指導をして撮影していったんですけど、建物の警備の問題で夜の11時には撤収しないといけなかったんです。だから実質5～6時間で撮りましたね。
I :
じゃあ登場しているレスラーの方は、試合が終わってそのまま状態で撮影に入ったんですか？
ゲン :
そうです。（笑）
I :
すごい体力ですね～（笑）
ゲン :
ある種、奇跡的に仕上がったという感じですね。その分、エネルギーが凝縮されています。
I :
DATE会員とすれば、エキストラはどのようにして選ぱれたか気になると思いますが？
ゲン :
そうですね、DATE会員の方々にお手伝いいただ こうかという案もあったんですけど、作品の中でエキストラの方が凶器を出したり、微妙に絡んでくるんですね。椅子振り上げたりとかレスラーが場外に飛んだりとか、怪我をさせてはいけないし、こういった撮影に関わった人の方がいいだろうという事で、吉本にNSCというお笑い学校があるんですけど、その生徒を招集しました。
I :
何人ぐらいですか？
ゲン :
200人ぐらいです。（笑）
I :
これは授業の一環になるんですか？
ゲン :
そうです、授業の一環です。ギャラ一人500円で、 グワッハッハッハ！！ レスラーの方々も岡村靖幸大ファンですっていう人がいっぱいいましたね。
I :
へえ～×15 それは接点としては意外な感じですね。
ゲン :
デルフィンさん達も協力的で。
I :
デルフィンさんは岡村ちゃんのファンですか？
ゲン :
デルフィンさんはどうだったんでしょうね？ 敵役のガンマさんはファンだったらしくって本当に喜んでくれてました。カメラアングルの面白いアイデアとかも出してもらって、岡村自身も普通のテレビ放送では見れないアングルもどんどん使っていきたいって話していたんで、そういう意味でも面白いPVになったと思いますね。
I :
仕上がりに関して岡村ちゃんは何か言ってましたか？
ゲン :
殆ど手直しがなかったですね。ほぼ一回のチェックでOKが出たのは珍しいですね。おそらく撮影前にどのフレーズでどのシーンになるとか、細かいカット割りを決めてあって、打ち合わせしたものがそのまま映像になっていたのでイメージのブレがなかったからでしょうね。岡村自身、本田監督の仕事ぶりには満足していましたね。
I :
このPVはいつ頃から流れるんですか？
ゲン :
シングル発売前には流れてると思いますよ。
I :
そうなると、最後に出てくる謎のお掃除お兄さん（笑）も見る事ができるんですね？
ゲン :
ええ、まあ・・・（笑） 今回もゲン・トラヴォルタが出てますね。
I :
何で手前にいるんですか！ 僕は岡村ちゃんが前でもいいと思うんですけど？（笑）
ゲン :
オレ様を見ろ！ エッー！（蝶野風に）ボコッ！！!
I :
イタッ！ え、演出なんですか？
ゲン :
その通りです。監督の指示どおりに。与えられた仕事をしっかりとこなしたと。
I :
話が前後してますが、この曲をシングルにしようとしたいきさつは？
ゲン :
元々、｢モン・シロ｣ と並列してシングル候補で、仕上がった段階で純粋に曲の良さでシングルカットしたいんだと Def Jam からも要望があって、我々も異論がなかったのでとても前向きな形でリリースになりました。
I :
｢モン・シロ｣ はディスコ＆ファンク色が強い曲でしたが、今回はテイストとしては？
ゲン :
そうですね、デモ曲としては数年前から聴かしてもらっていた曲なんで、岡村靖幸の “青春” っていうキーワードに一番フィットする曲だと思っていたし、いわゆるオールドファンにとっては涙もののサウンドになっていると思いますね。これだけメロディアスでキャッチーなタイプの曲も久しぶりなんじゃないかな。
I :
｢ミラクルジャンプ｣ っていうタイトルはゲンさんにとってどう響きますか？
ゲン :
僕が岡村と関わるようになって最初にデモで録った曲なんで、詞の中身も含めて ｢岡村靖幸、堂々凱旋！｣ って感じですかね？彼にとってもスタジオにこもっている世界からミラクルジャンプして戻ってきた感じだと思うんで、岡村ファン以外の人でも影響される人はいっぱいいるんじゃないですかね。
I :
ジャケットデザインを見ると、人それぞれいろんな事を考えるんじゃないですかね？（笑）
ゲン :
グハッハッハッハ！！
I :
女性の持つ足ではないと！ 岡村ちゃんはそっちの方向にミラクルジャンプしちゃったのかと。（笑）
ゲン :
あれはそういうことではなくてですね（笑）、これも岡村靖幸独特のシュールの極地というかシニカルさの極地というか、そんな感じですね。